今月のインプラント関連の最新論文
【 佐藤琢也 記 】
デンタルインプラントセンター大阪では毎月、インプラントと歯周病に関連する最新英論文を翻訳する勉強会が開催されております。
今月はインプラントを学ぶ歯科医師の先生向けに下記の論文を紹介させていただきます。
炎症下では吸収されない脱タンパク牛骨ミネラル骨補填剤 ‐ネズミの頭蓋での骨補填の研究‐
Title :DBBM shows no signs of resorption under inflammatory conditions. An experimental study in the mouse calvaria.
Author:Ulrike Kuchler Gabriel Mulinari dos Santos Patrick Heimel Alexandra Stähli Franz Josef Strauss Stefan Tangl Reinhard Gruber
Journal:Clin Oral Impl Res. 2020;31:10-17
PURPOSE
脱タンパク牛骨ミネラル(DBBM)がインプラント治療にて頻繁に用いられるが,その吸収の動態については不明点が多い.本研究ではマウスの頭蓋を用いた実験モデルにて局所的感染下におけるDBBMの吸収とレシピエントの変化を観察する.
MATERIALS AND METHODS
30頭のマウス(8-10 weeks,)の頭蓋の骨膜を剥離し,下記の割合で骨補填材を移植した.
■control group: DBBM単体 (50 mg, Bio‐Oss, Geistlich)
■LPS group:DBBM 50mg単体を移植し,腸管出血性大腸菌由来のリポポリサッカライド.(Lipopolysaccharide:内毒素)を術後2日,5日後の術部に25 mg/kg, Sigma注入.
Ceridust
group
Ceridust
group
■Ceridust group:DBBM (25 mg) にpolyethylene particles (25 mg; 1%; Ceridust VP 3620; Clariant),を混和し移植.
マウスは14日後に屠殺し,それぞれの頭蓋に対してμCTによる形態学的研究と組織学的研究を行った.
RESULTS
27匹のマウスが検体として採用された.7匹にフラップの裂開がみとめられたが,各グループにおいての差は認められなかった(control群:2例, LPS群:3例, Ceridust群:2例).μCTによる形態学的研究において,LPS群とCeridust群では骨造成の術部にて異質で大規模な骨欠損が生じているのが観察され,control群とその他とのグループで統計学的有意差が認められた(control群: 5.2%,LPS群: 21.4%, Ceridust群: 14.2%).
また,LPS群とCeridust群にて頭蓋骨の大規模な骨融解が生じているのが観察された.
組織学的研究においては,各グループ間での炎症反応の顕著な差は認められなかった.また,全てのグループにおいてDBBMの吸収は観察されなかった.一方,LPS群,Ceridust群で骨の補償的な修復が観察された.Figure5:組織学的研究の一部
DISCUSSION & CONCLUSION
マウスのモデルにおいて,炎症下にあるDBBMは骨造成後に吸収されず,一方で受容側である頭蓋骨には大幅な吸収が認められたことから,このような環境下でのインプラントの骨造成術は有効ではないと結論付けられた.
POINT OF CRITICISM
もうすこし経過を観察して評価した場合,組織学的な炎症反応にも変化が現れるのであろうか?
臨床では炎症,感染の定義も困難であり,どのていどの「炎症」であれば,抜糸即時のインプラント埋入,Ridge Preservationの際の判断は可能なのであろうか?
TOPIC OF CONCERN 1,4,6