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今月のインプラント関連の最新論文

【 佐藤琢也 記 】

デンタルインプラントセンター大阪では毎月、インプラントと歯周病に関連する最新英論文を翻訳する勉強会が開催されております。
今月はインプラントを学ぶ歯科医師の先生向けに下記の論文を紹介させていただきます。

口蓋と上顎結節から結合組織を移植した場合のインプラント周囲歯肉の安定性 ‐ランダム化比較試験‐
Title :Soft tissue stability around dental implants after soft tissue grafting from the lateral palate or the tuberosity area – A randomized controlled clinical trial
AuthorErnest Rojo, Giorgio Stroppa, Ignacio Sanz-Martin, Oscar Gonzalez-Martín, Jose Nart
JournalJ Clin Periodontol. 2020;47:892-8

PURPOSE
インプラント周囲組織の審美性と形態の改善のために上皮化結合組織移植術が行われることは間々あり,また,そのドナーの採取箇所としては口蓋と上顎結節部が用いられる.その際の採取部位の相違による術後のインプラント周囲歯肉の安定性を,ランダム化比較試験によって検討する.

MATERIALS AND METHODS
29患者,33本のインプラント周囲歯肉に軟組織の形態改善のために結合組織移植術(SCTG)が計画され,ドナーの採取部位は口蓋歯,もしくは上顎結節部とした.その割付は無作為に行われ,最終的に27患者,31本のインプラントにSCTGが実施された.

❐外科術式
アバットメントが締結されたインプラントと隣在歯に対して歯肉溝内切開を行い,インプラントの頬側歯肉に部分層弁を設けた.ドナーはdouble bladed knife techniqueにより10✕12✕1.5mmの結合組織を口蓋(control group : CG)もしくは上顎結節(test group : TG)から採取し,インプラント周囲歯肉に移植した.

❐Intra Oral Scan(IOS)による歯肉の計測
SCTGの術後4ヶ月後に最終補綴装置を装着し,IOSによりインプラント周囲歯肉の厚みを計測した(FU-4).さらに8ヶ月後に同様の手法で再度計測を行い(FU-12)隣在歯をリファレンスポイントとして重ね合わせをし,FU-4からFU-12歯肉の厚みの変化を測定した.

❐その他の臨床的パラメーターの比較
PI, BI, PD expressed in % (Mean ± SD), KT:Width of Keratinized Tissue, Pink Esthetic Score.

RESULTS
❐IOSを用いて計測したFU-4〜FU-12のインプラント周囲歯肉の厚みの変化
→CGとTGに統計学的有意差は認められなかった(Mann-Whitney U test.).

❐その他の臨床的パラメーターの比較
→KTの増加において,TG>CG,統計学的有意差が認められた.(Mann-Whitney U test.)

DISCUSSION & CONCLUSION
CG,TGともにSCTG後の歯肉は安定しており,術後の経過も大きな臨床的な差違が認められなかった.しかし,上顎結節から採取した歯肉を用いて行うSCTGのほうがインプラント周囲の角化歯肉の増加が期待できるかもしれない.

POINT OF CRITICISM
CGとTGの比較を12ヶ月の経過だけで行うには観察期間が短く,自身の症例では数年後にその差が顕著に現れるように思える.
最終補綴後のインプラント周囲歯肉の推移を比較しているが,SCTG術直後から補綴装置装着直前(FU-0〜FU-4)の両者のインプラント周囲歯肉の厚みの変化(厚みの改善)については議論されていない.

TOPIC OF CONCERN 6,12

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