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今月のインプラント関連の最新論文

【 佐藤琢也 記 】

デンタルインプラントセンター大阪では毎月、インプラントと歯周病に関連する最新英論文を翻訳する勉強会が開催されております。
今月はインプラントを学ぶ歯科医師の先生向けに下記の論文を紹介させていただきます。

上皮付きの結合組織か,あるいは上皮付きでない結合組織をもちいた場合の根面被覆術の長期経過の検証-12年経過のランダム化比較試験-Title :Long term assessment of root coverage stability using connective tissue graft with or without an epithelial collar for gingival recession treatment. A 12-year follow-up from a randomized clinical tri
Author :Barootchi S, Tavelli L, Di Gianfilippo R, Byun HY, Oh TJ, Barbato L, Cairo F, Wang HL.
JournalJ Clin Periodontol. 2019 Nov;46(11):1124-1133.

PURPOSE
歯肉退縮に対する根面被覆術を歯肉弁歯冠側移動術をもちいて治療する際に,上皮のカラー付きの結合組織移植を用いる場合と,上皮のない結合組織を移植する場合との治療結果を,術後6ヶ月時と,12年経過のフォローアップ時に評価する.

MATERIALS AND METHODS
歯肉退縮を有する20名の患者に対して根面被覆術を行った.根面被覆術は歯肉弁歯冠側移動術(CAF)によるが,20名の患者を10名の2群に無作為に振り分け,それぞれのグループに対して下記のような術式を採用した.なお,CAFには縦切開を用いないクローズドアプローチが採用されている.
① CAF+ECTG:上皮カラー付き結合組織の移植
② CAF+CTG:上皮のない結合組織の移植
③ CAF:CAF単独.上記の施術部位の隣在歯を被検部位としている.
6ヶ月後に術後の評価をおこない,各群の根面被覆達成の割合 (mRC), 完全な根面被覆が達成された割合(CRC) ,角化歯肉の幅(KTW),歯肉の厚み(GT),臨床的アタッチメントレベル(CAL),ポケットの深さ(PD),を計測し,12年経過時にも同様に測定した.

RESULTS
6ヶ月後の3群のmRCに統計学的有意差は認められなかったが,12年後にはCAF+ECTG群,CAF+CTG群と,CAF単独群には有意差が認められ,CAFの術後は退縮傾向にあることが示された.CRCは各群で有意差は認められなかった.KTWについては6ヶ月時にCAF+ECTGが,CAF単独,CAF+ECTGと比較して有意に大きい値を示したが,12年後のCAF+ECTGとCAF+CTGには有意差は認められなかった. Figure5:術後6ヶ月から術後12年経過観察時の臨床データの比較

DISCUSSION & CONCLUSION
CAF単独はCAF+CTG,CAF+ECTGと比較した場合長期の経過により被覆された歯肉は退縮する傾向にあるため遊離結合組織移植術を併用すべきとの結果が得られた.一方で,歯肉移植片の上皮を残存させて根面被覆術に用いた場合,6ヶ月後には角化歯肉の獲得が顕著であったが,12年後には上皮付きでない移植片の結果と比較して大きな差は認められなかったため,審美性にも考慮すると,上皮付きでない結合組織移植片をもちいることが推奨される.

POINT OF CRITICISM
CAF+CTG vs CAF+ECTGの比較と思いきや,突然のCAFの参戦の三つ巴図式に.Method ではCAFの被検歯についての詳しい記載はなく,Discussionにて簡単に説明されているのみである.被検歯の部位,N数の詳細も不明である.著者が明かすにはRCT時の振り分けによって部位的に隔たりが生じたことがバイアスとして影響していることも指摘している.また,Millerの分類のClass1,2を同じように治療している点も考慮すべきであろう.

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