今月のインプラント関連の最新論文
【 佐藤琢也 記 】
デンタルインプラントセンター大阪では毎月、インプラントと歯周病に関連する最新英論文を翻訳する勉強会が開催されております。
今月はインプラントを学ぶ歯科医師の先生向けに下記の論文を紹介させていただきます。
外科的治療一年後の一年後の歯周組織の治癒に喫煙が及ぼす影響
Title :Influence of smoking on periodontal healing one year after active treatment
Author:Aorra Naji, Kristina Edman, Anders Holmlund
Journal:J Clin Periodontol. 2020;47:343-350
PURPOSE
4mm以上の歯周ポケットに対して行った外科治療一年後の治療結果において,喫煙が及ぼす影響を単変量解析と多変量解析の手法により検討.
MATERIALS AND METHODS
1980年〜2015年の間にGävle County Hospitalにて行われた4,988患者を調査.
喫煙者(Smoking群)と,非喫煙者(Non-smoking群)の,下記の臨床検査値を比較.
・number of teeth (NT): 残存歯数
・the proportion of plaque(PLI):歯垢の付着状況
・bleeding on probing (BoP): 歯肉溝からの出血
・probing pocket depth(PPD): プロービング値(4点法のもっとも高い値)
→ 4mm以上を歯周ポケットと定義
・good responders (scored0): 治療後の4mm以上のポケットの割合が10%未満,かつBOP(+)も10%未満
・poor responders (scored 1): 上記以外
術前,術後の有意差はWilcoxon signed rank testにて,群間の単変量解析にはMann-Whitney U testを用い,さらに群間の多変量解析を試みた.
RESULTS
3,535人の患者に対する歯周治療(非外科+外科)が調査対象となった.
l 1,355 non-smokers:49%男性,平均57.4歳
l 2,180 smokers:40% 男性,平均48.8 歳
術前のPLI, BoP, PPD 5-6 mm, PPD>6mm,PPD>4mmの割合が有意に大きい.
❐グループ内での術前・術後の結果
:Smoking群,Non-Smoking群ともに歯周治療一年後の臨床検査値に改善が認められた(PLI,
BoP, PPD > 4 mmの割合に統計学的有意差).
❐グループ間での術後の結果の比較(単変量)
◆非外科+外科
Non-Smoking群のPLI, BoP, PPD 5-6 mm, PPD > 6 mm ,PPD > 4 mmの割合に統計学的有意差を持って改善傾向が認められた.→Table1
❐グループ間での術後の結果の比較(多変量)
◆非外科
改善したPLI,BOPはNon-Smoking群で顕著.
◆外科
PPD>4mmの割合,BOPの減少はSmoking群で顕著.その一方で,good respondersはNon-smoking群にて統計学的に有意(OR:2.4).
DISCUSSION & CONCLUSION
Smoking群はNon-Smoking群と比較して平均年齢が若く,外科治療後のポケットとBOPの減少がが有意に大きかった関わらず,手術一年後の4mm以上のポケットの割合とBOP,歯垢の付着は多く残存していた.また,Non-smoking群においてはsmoking群と比較し,より治療結果の改善が見て取れるため,喫煙は歯周治療の効果を減少させる可能性が示唆された.
POINT OF CRITICISM
table2の多変量解析の結果をどのように評価すべきか?なんともわかりにくい結論となった.喫煙者への歯周外科は効果的であるが,喫煙は歯周治療に悪影響,というのは正しいか?
(抄録のConclusionとClinical Relevanceを参照して治療結果を想像できるであろうか?)
TOPIC OF CONCERN 6,17